最近は朝晩が涼しくなり、秋らしくなってきました。
日中との寒暖差も大きくなってきていますので、
皆様も体調管理には十分お気をつけください。
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さて、今回は少し普段とは違うお話をしてみたいと思います。
先日、京都労働基準監督署による労働条件の調査があり、
当院も対象となりました。
必要な書類をそろえて出向き、約2時間にわたって、
いろいろとお話を伺ってきました。
その中で職員の時間外労働に関する
手続きについて指摘を受けました。
もちろん、職員の健康を守り、安心して働ける環境を、
整えることは医療機関として当然の責任です。
今回の指摘についても、必要な対応を進めています。
ただ、その一方で、少し考えさせられることがありました。
最近、当院の周辺でも診療所や小規模病院の閉院が、
少しずつ増えてきているように感じます。
医師の高齢化や後継者不足など理由はさまざまですが、
最近は国が進める医療DXへの対応も、
医療機関にとって大きな負担になっていると思います。
電子カルテやオンライン資格確認、電子処方箋など、
医療のデジタル化が進められています。
もちろん、医療の質や利便性を高めるためには必要です。
しかし、こうしたシステムの導入には費用がかかり、
導入後も維持管理費や更新費用が発生します。
国の補助制度もありますが、十分とは言えない状況です。
特に高齢の開業医にとっては費用だけの問題ではなく、
長年慣れ親しんだ診療の仕組みを変更し、
新しい制度に対応すること自体が大きな負担になります。
体力的にはまだ十分に診療を続けられるとしても、
新しいシステムへの対応や設備投資を考えると、
予定より早く閉院を選択する医療機関もあるのでしょう。
国は医療の効率化を進めながら、そのために必要な、
費用や人材を十分に支援していません。
医療を良くするための政策が閉院を早めれば本末転倒です。
医療機関が閉院すると、そこに通院されていた患者さんは、
別の医療機関を探すことになります。
当院でも、他院からの患者さんが増えてきています。
地域の患者さんにとって、通い慣れた医療機関が、
なくなることは大変なことです。
できるだけ受け皿になりたいのですが、限界もあります。
一方で国は、診療所に通常の外来診療だけでなく、
時間外や休日の対応、在宅医療、医療機関同士の連携など、
地域医療を支えるさまざまな役割を求めています。
24時間の連絡・対応体制なども、他の医療機関と、
協力して整える仕組みが設けられています。
それでなくても医療機関の経営は厳しくなっています。
診療報酬は国が決めるため、物価や人件費が上昇しても、
一般企業のように自由に値上げはできません。
診療報酬の改定も、経費の上昇に十分追いついていません。
国は医療従事者の賃上げや処遇改善を求めていますが、
そのための財源も必要です。
人手不足の中で、給与を上げなければ職員が集まらず、
上げれば経営が圧迫されます。
限られた人数で診療を続ければ、職員の労働時間が増え、
今度は労基局からその是正を求められることになります。
このあたりに、何とも難しい問題があるように思います。
診療報酬を抑えながら、医療の質と診療体制を維持し、
職員の賃金は上げ、労働時間は短縮する。
さらに、医療DXへの投資も進めるよう求められています。
一つ一つの政策は正しい方向を目指しているのでしょう。
しかし、これらを同時に実現するための財源や人材は、
十分に確保されているのか、疑問に感じるところです。
医療機関の努力と工夫だけで、すべてを解決することには、
やはり限界があります。国が求める役割が増えるのであれば、
それを支える仕組みも必要と考えます。
近年は医師の働き方改革も進み、勤務医についても、
時間外労働の上限が設けられるようになりました。
医師の健康を守るためには、当然必要な取り組みです。
しかし、診療所を経営する開業医は、通常、
勤務医と同じ労働時間の規制を受けません。
職員の労働時間を減らして診療を続けると、院長の負担が増えます。
ちなみに私も、朝早くから夜遅くまで働くことが、
珍しくありません。若いころは外科医として、
当直や緊急手術などで長時間働いていました。
そのころの医師は24時間働くべきという刷り込みが、
今でも抜けていないのかもしれません。
勤務時間だけを見れば、いわゆる過労死ラインを
何度通り過ぎたかわかりません。
幸い今のところ元気に診療を続けていますが、
長時間労働に慣れているからといって、
健康への影響がなくなるわけではありません。
職員の労働環境を守り、患者さんの診療も続け、
医療機関の経営も維持する。その最後の調整役が、
開業医自身の長時間労働になっているように感じます。
地域医療が開業医の自己犠牲に支えられているとすれば、
果たしてそれは持続可能な制度なのでしょうか。
もちろん、すべての診療所が同じ状況ではありません。
しかし、地域の医療を幅広く担おうとする医療機関ほど、
こうした負担が大きくなりやすいのではないでしょうか。
そして、医療機関が一つ閉院すると問題はさらに広がります。
残された医療機関に患者さんが集中することで、
医師だけでなく、看護師や事務職員の負担も大きくなります。
それが離職につながれば、さらに人手不足が進みます。
やがて診療時間や受け入れる患者数を減らさざるを得ず、
医療機関の経営にも影響が出てきます。
こうしたことが連鎖すれば、地域全体の医療体制が弱くなります。
国は地域医療の充実を掲げていますが、
その地域医療を実際に支える医療機関が減っていくのであれば、
政策の方向性を考え直す必要があるのではないでしょうか。
医療機関に求める役割を増やすのであれば、
それを支える財源や人材も必要です。
その負担を医療機関だけに任せ続ければいずれ限界が来ます。
今回の労働基準監督署の調査は、職員の働き方だけでなく、
開業医自身の働き方や地域医療のこれからについても、
改めて考える機会になりました。
働く人の健康を守ることも、
患者さんが安心して医療を受けられることも大切です。
その両方が無理なく成り立つ医療制度であってほしいと思います。
当院でも職員の負担を減らしながら、
これからも地域の皆様に必要な医療を提供できるよう、
少しずつ診療体制を見直し、日々の診療を続けていきます。
今回はずいぶん長くなってしまいました。
我慢強く最後までお読みいただいた方、
本当にありがとうございました。
吉岡医院 吉岡幹博
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