京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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熱中症について

2018年7月27日

記録的な猛暑が続いています。
連日30度後半、下手すると40度に迫る
恐ろしい暑さです。

今年は本当に異常気象を実感しますし、
立て続けに起こる自然災害に、
この先日本はどうなることか心配してしまいます。

 

地震 → 大洪水 → 記録的熱波。

 

今週末には台風も来るそうですね。
皆様体調管理とともに、
災害には十分ご注意ください。

 

 

最近は暑い日が続くと、
「熱中症にご注意ください」と
繰り返しアナウンスされます。

今回のブログではこの時期ですので、
今更と思うかもせれませんが、
熱中症について考えてみたいと思います。

 

では熱中症とは何なのでしょうか?

 

熱中症とは、
「暑熱環境における身体の適応障害によって
発生した状態の総称」と定義されています。

 

簡単に言うと、夏場など高温多湿な環境に、
私たちの身体が対応しきれない状況で起こる
いろいろな症状のことを指しています。

 

いろいろな症状といいますが、
軽いもので、「めまい」や「頭痛」、「吐き気」から
重い症状の「意識障害」「痙攣」などまで
多岐にわたります。

 

熱中症が起こるメカニズムは簡単に言うと、
暑すぎて体温の調節機能が破綻し、
深部体温が上昇することにあります。

深部体温とは身体内部の体温です。
直腸温で計測することが多いのですが、
環境からの影響を受けにくく一定に保たれています。

 

体温が上昇した場合、
人の体は適度な体温を維持するために、
汗をかいたり皮膚温度を上昇させたりして
熱を体外へと放出します。

 

この機能が損なわれることで熱中症が生じます。

 

高温による臓器障害には、
軽傷では筋肉、消化管に、
重症化するに伴い中枢神経、循環器、
肝臓、腎臓、凝固系に生じます。

 

ここで日本救急医学会が提言している、
重症度の分類を見てみましょう。

 

熱中症

 

熱中症の重症度分類は、
大きく分けて3つに分かれます。

 

 

I度では立ちくらみや筋肉痛など、
一見熱中症の初期症状かどうか、
わからないような症状も含まれます。

立ちくらみは末梢血管の拡張や血流分布の
変化でおこる、相対的な循環血液量の低下による
起立性低血圧の症状です。

また筋肉の硬直は大量の発汗により、
ナトリウムが失われて起こる、
筋肉の興奮性の亢進と考えられています。

 

II度の熱中症は、
I度に発汗に伴う脱水症が加わると、
熱疲労となり起こります。

頭痛、嘔吐、集中力、判断力の低下が、
症状として現れます。

 

この時点で治療が行われた場合予後は良好ですが、
放置されたり適切な治療が受けられないと、
重症化しIII度に移行します。

 

III度の熱中症では、
体温調節中枢が機能不全となり、
体から熱放散ができず多臓器不全になります。

42度以上の高体温では、
細胞障害と細胞死が起こるそうです。

そこに感染症を合併したりすると、
血液の凝固機能が障害され、
重篤な多臓器不全に移行することがります。

 

「発汗停止、体温40度以上、意識障害」の
3つの兆候がそろった時には、
病状は極めて進行し危険な状況と考えられます。

 

ではどのようなときに、
熱中症になりやすいのでしょうか。

 

熱中症になる要因には、
環境要因・身体要因・行動要因の
3つがあります。

 

環境要因としては、
気温が高い、湿度が高い、日差しに当たっている、
風通しが悪い、など

身体要因としては、
子ども、高齢者、脱水状態、など

行動要因としては、
炎天下で活動する、水分や休憩がとれない、
日陰などで休まない、などがあります。

 

またIII度熱中症には、
非労作性、労作性に分類されます。

前者は高齢者、乳幼児や衰弱した人など、
正常な体温調節機能の低下している人が、
エアコンのない部屋などで、
長時間高温下の環境いることで生じます。

後者は健康な若者や運動選手が、
高温または湿度の高い環境下で、
激しい運動や土木作業などにより、
熱産生が熱放散を上回ることで発症します。

 

よくニュースで取り上げらる、
中高生が運動場で起こるような熱中症と、
高齢者が室内で起こす熱中症では、
性質そのものが異なるのです。

 

そして最も重症な状態では、
肝臓や腎臓が機能障害を起こし、
さらに血液凝固異常が生じると、
多臓器不全に陥るとされています。

 

健康な若者でも熱中症で亡くなる理由は、
このような病態が短期間で進んだものと考えられ、
決して甘く見てはいけないのです。

 

治療や応急処置ですが、
I度は日陰など涼しい場所に移動し安静にする。
保冷剤や冷えたペットボトルなどで冷却します。

 

失われたナトリウムを補充するために、
スポーツドリンクや経口補水液を投与し、
症状が回復すれば医療機関受診は必要ありません。

 

II度の症状が見られたり、
I度でも応急処置で改善が見られない場合は、
すぐに医療機関への搬送が必要です。

入院も考慮され、輸液を行い、
脱水、ナトリウムの補正が必要となります。

 

III度では医療機関で、
早期から積極的な冷却と全身管理、
中枢神経保護の治療が必要となります。

重症の場合は集中治療室で
モニター管理されます。

 

熱中症と一言で言いますが病状は様々です。
常に熱中症の可能性を考えて、
無理しないようにしましょう。

 

<まとめ>

 

・暑熱環境での体調不良は、
全て熱中症の疑いがあります。

・熱中症の症状は、対処するタイミングや
患者さん側の条件で刻々と変化します。

・特に意識障害の程度、体温、発汗の程度は、
短時間での変化の程度が大きいので、
重症度判定において重要な指標となります。

・I度は現場での対応が可能、
II度以上は速やかに医療機関に受診が
必要となります。

 

そして医療機関で必要な情報としては、

・持病の有無とその程度、治療内容
・どのような環境でどのような活動を行ったか
・倒れた時の様子はどうだったか
・水分や塩分の補給状況は
・応急処置とその後の病状の変化

などです。

 

今年の夏は特に暑い期間が長いです。
知らないうちに体力を奪われていることもあるでしょう。
高齢の方、持病のある方は特にお気をつけください。