京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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胃カメラでわかる病気 咽頭がん、喉頭がん

2019年4月17日

春らしい穏やかな日が続いております。
鴨川の桜も今年は長持ちしていますね。

 

早朝の冷え込みもようやくましになり、
これでコートが手放せるのではないでしょうか。

 

そしていよいよ
10連休が近づいてきました。

 

これだけ長期の休みが続くと、
私にとっては往診の段取りなどが大変です。
かえって要らないかなと思ってしまいます。

 

平成もいよいよ終わりを迎えますね。
皆様はどのように、
お過ごしになられますでしょうか。

 

 

 

 

さて今回は、
胃カメラでわかる病気について、
咽頭がんと喉頭がんについて
少しお話します。

 

胃カメラの際に、
「喉の病気もわかるのですか」ということを、
よく聞かれるようになりました。

 

最近は有名人の中に
口や喉にがんができる方もおられ、
症状がある方は心配されます。

 

答えは、
出来る限り観察しています、
です。

 

本来喉は耳鼻咽喉科の領域ですので、
もちろんすべての病気に
詳しく知識があるわけではありません。

 

しかし「がん」に関しては、
これを見落とすわけにはいきませんので、
胃カメラの際は注意してみています。

 

もともと胃カメラでは消化器内科の担当する臓器、
食道、胃、十二指腸を中心に観察しますが、
最近ではカメラが通過する咽頭や喉頭も対象となり、
病気の拾い上げを行っています。

 

それも胃カメラの画質、性能が上がるにつれ、
今までは発見困難な早期の病変も見つかるようになり、
詳しく観察するようになってきました。

 

ということで、
口の中にカメラを入れた段階から、
基本的には観察がスタートします。

 

口腔内はあまり観察しません。
舌の裏など観察される先生もおられますが、
ここはまだまだマイナーな領域です。

 

従って胃カメラで最初に観察するのが、
舌の奥の外からは見えない場所
細かく言うと、咽頭、喉頭になります。

 

咽頭と喉頭は場所は似ていますが
違う部位を指します。

 

喉頭は気管の入り口にあり、
声帯などがあるところです。
体表からではのどぼとけの位置です。

 

有名な方では歌手のつんくさんが、
喉頭がんになり手術を受け、
声を失われたことはご存知かと思います。

 

それに対して咽頭は、
鼻の奥から食道に至るまでの、
空気や食べ物の通り道です。

 

咽頭は鼻の奥の上咽頭、
口の奥に当たる中咽頭、
喉頭の裏側に当たる下咽頭に分かれます。

 

胃カメラで見るときは、
上咽頭は見えませんので、
中咽頭の一部、主に下咽頭になります。

 

 

咽頭がんの原因は、
上咽頭がんではウイルスの関与がありますが、
中咽頭、下咽頭がんの原因は、
過度の喫煙や飲酒と言われています。

 

喉頭がんも同じ理由で、
原因の大半は
過度の喫煙や飲酒です。

 

特に喉頭がんの90%は喫煙者であり、
タバコを吸わなければかかることの少ない癌と
考えらえれています。

 

同じように食道がんのリスクファクターも、
飲酒と喫煙が多く占めており、
食道がんと咽頭がんはしばしば合併します。

 

従って咽頭、喉頭がんが見つかった患者様は、
食道がんがないかじっくり観察が必要で、
逆に食道がんが見つかった患者様には、
喉の観察がより大切になってきます。

 

 

では、
どれくらいの頻度でかかるのでしょうか?

 

10万人中で1年間にかかる人数を比較しますと、
男性の場合、およその数で、
胃がんが140人、食道がんが30人、
口腔・咽頭がんが20人、喉頭がんが8人です。

 

女性の場合は、
胃がんが60人、食道がんが5人、
口腔・咽頭がんが8人、喉頭がんは0.5人です。

 

お分かりのように、
胃がんなどに比べると
頻度はかなり少ないがんです。

 

従って
過度な心配はいらないと思います。

 

また喉頭がんは特にそうですが、
食道がん、喉頭がんは、
圧倒的に男性に多いがんと言えます。

 

 

また死亡者数ではどうでしょうか。

 

これも10万人当たりで、
男性の場合、およその数で、
胃がんが49人、食道がんが15人、
口腔・咽頭がんが8人、喉頭がんが1人です。

 

女性の場合は、
胃がんが24人、食道がんが3人、
口腔・咽頭がんが3人、喉頭がんは0.1人です。

 

上記罹患率と死亡率は
年度が異なり単純な比較はできませんが、
食道がんや咽頭がんは数は少ないけれど
胃がんに比べると治りにくいがんのように見えます。

 

おそらく胃がんのように検診もないので、
早期発見が難しいためではないでしょうか。

 

 

実際私が内視鏡する際には、
まず口から喉にカメラをそっと入れ、
そこで咽頭と喉頭の観察を、
少し声を出してもらいながら行います。

 

NBIという特殊な光に変えて、
通常光では見つけられないような早期の
がんが隠れていないかどうか観察します。

 

しかし喉の手前でじっくり観察するのは、
おえっとなる反射の強い患者様によっては、
かなりの苦痛を伴うものです。

 

それなので、若い女性の方や、
飲酒、喫煙のない方などリスクの低い方は、
この場所の観察は無理はしません。

 

滅多にないがんを探すより、
食道、胃の観察に注力したほうがいいですし、
何より検査の出だしで苦しい思いをすると、
後の検査中も苦痛が続いてしまうことがあります。

 

逆に、男性、中高年、特に喫煙者の場合は、
細心の注意を払って観察します。
実際に当院でも喉頭がんが見つかっています。

 

 

このように頻度は少ない咽頭・喉頭がんですが、
リスクファクターがはっきりしている分、
対象となる方にはより注意が必要となります。

 

飲酒が多い、喫煙歴が長い中高年男性の方は、
症状がないうちからでも
定期的に胃カメラでチェックが必要です。

 

どのがんでもそうですが、
早期発見こそが治療の上で
最も重要となるからです。

 

 

最後に、
気になる症状についてですが、

 

喉頭がんの場合は、
声がかすれる嗄声や呼吸苦、血痰、
喉の異物感や首のリンパ節の腫れなどです。

 

咽頭がんは、初期には喉の違和感、痛み、
進行すると食事がつかえたり息苦しさが
出てくることがあります。

 

このような症状のある方は、
耳鼻科に相談するか消化器科で
胃カメラを受けられてはどうでしょうか。

 

 

ご参考になれば幸いです。