京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
診療時間 午前9時~/夜診17時~
婦人科は夜診なし
休診日 木・日・祝/土(午後)
※令和5年7月より木曜日は
 休診日となりました
  • お問い合わせ

    075-451-0164

新型コロナウイルスに対する経口治療薬「ラゲブリオ」について

2022年1月17日

寒い日が続いていております。
先週は京都も久しぶりに積雪がありましたので、
車での出勤は断念し公共機関を利用しました。

個人的には寒いこの季節は苦手です。
早く暖かくなって日が長くなってほしいと思うこの頃です。
皆様は如何お過ごしでしょうか。

 

そしてとうとう始まりました、
オミクロン株によるコロナ感染第6波、
本当にものすごい勢いですね。

当院では1月11日に陽性者が1名出ました。
昨年9月末以来3か月ぶりとなりますので、
ずいぶん久しぶりに出たことになります。

それが3日後の14日には
当院発熱外来で18名のPCR検査を行い
そのうちの11名が陽性となりました。

当院の1日の陽性者数としては過去最高です。
急激に感染爆発した感がありました。

感染者の傾向としては、年末年始の移動より、
1月8~10日の3連休の移動や会食が原因のようです。
成人式関連で20歳の方もかなり多かったです。

この状況よりウイルスの潜伏期間は数日と考えられ、
これまでの株は1週間~10日くらいでしたので、
かなり短くなっている印象です。

しかし問題はこの勢いです。
濃厚接触者としての感染や家庭内感染も、
感染力は従来のものよりかなり強力です。

皆様もこれまで以上に注意なさってください。

 

 

さて今回は昨年末に特例承認された、
新型コロナウイルスに対する経口の抗ウイルス薬
「ラゲブリオ」についてご報告します。

特例承認とは、健康被害の拡大を防ぐために、
他国で販売されている日本国内未承認の新薬を、
通常よりも簡略化された手続きで承認し使用を認めることです。

 

ラゲブリオは米メルク社(MSD)が開発した飲み薬で、
新型コロナウイルスの経口薬としては、
国内初承認ということになります。

海外では11月4日に英国で世界初承認され、
12月23日に米国でEUA(緊急使用許可)を受けています。

一般名を「モルヌピラビル」といいい、
生体内で加水分解されて生じた活性代謝物が、
SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼの基質となり、
ウイルス複製を阻害するというのが薬理作用です。

 

対象となるのは18歳以上のコロナ感染者ですが、
現時点で国内での対象者は、「重症化リスク因子」を有する
「軽症~中等症Ⅰ」の感染者となっております。

 

「重症化リスク因子」とは以下の項目になります。

 

・61 歳以上
・活動性の癌(免疫抑制又は高い死亡率を伴わない癌は除く)
・慢性腎臓病
・慢性閉塞性肺疾患
・肥満(BMI 30kg/m2 以上)
・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症)
・糖尿病
・ダウン症
・脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)
・コントロール不良の HIV 感染症及び AIDS
・肝硬変等の重度の肝臓疾患
・臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後

 

この項目に1つでも当てはまれば、
投与可能となります。

 

また、
「軽症~中等症Ⅰ」の感染者は、
以下の重症度分類で当てはまる方を言います。

 

 

つまりこの薬の主な投与対象者は、
コロナに感染が判明した方で症状が軽く、
61歳以上の方、糖尿病の方、肥満の方などになります。

 

1回800mg(4カプセル)を1日2回、
5日間経口投与します。

使用禁忌は
本剤のの成分に対し過敏症の既往歴のある方、
妊婦又は妊娠している可能性のある女性となっています。

 

この薬は供給が安定するまでの間、
国において本剤を買上げて医療機関及び対応薬局に
無償で提供することとしています。

医療機関で処方するには、
その医療機関は「ラゲブリオ登録センター」というところに
事前に登録が必要となります。

登録した医療機関で投与対象者が出た時には、
あらかじめラゲブリオ登録センターに登録した薬局に
処方箋やチェックリストなどの書類をFAX等で送付します。

処方箋が届いた薬局は在庫からお薬を提供します。
その際、自宅療養や宿泊療養の患者が来所しなくても済むよう、
患者の居所に配送又は持参することを原則としています。

ちょっと複雑ですが、
まだ十分な量の薬が入荷されていないので、
このような方法をとっています。

 

気になる効果の方ですが、
入院又は死亡に至った被験者の割合は、
本剤群で7.3%でプラセボ群の14.1%と比較して6.8%低く、
リスク減少率は48%で統計学的に有意な差が認められたとのことです。

また、全ての被験者を対象とした解析においては、
入院又は死亡に至った被験者の割合は、本剤群で6.8%であり、
プラセボ群の9.7%と比較して3.0%低く、
リスク減少率としては30%とされています。

 

実は治験の最終結果で入院、死亡を抑える有効性が
当初見込んだ50%から30%に下方修正されており、
本当に有効なのかはっきりしないところもあります。

フランスでは治験で期待した効果が得られなかったため、
モルヌピラビルの発注を取り消したととのことです。

従ってこれから日本国内の実臨床で使用され、
どれだけの効果があるのか検証されるものと思われます。

 

因みに今般猛威を振るているオミクロン株への効果ですが、
製造販売業者によると、in vitro(試験管内)での検討において、
アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、ラムダ株、
ミュー株、オミクロン株に対して、野生株と同程度の抗ウイルス活性が
認められていることが確認されているそうです。

 

投与に当たっては保健所の指示を待つ必要はなく、
添付文書等を確認の上、医師が必要性を認めた場合には、
速やかに投与いただいても差し支えないとのことです。

このお薬は症状が発現してから
速やかに投与を開始する必要があります。

臨床試験においては
症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における
有効性を裏付けるデータは得られていないとのことです。

従って対象となる患者様が出た時には、
その場で説明し処方箋を発行す対応が必要になります。

手続きも普段の処方よりも煩雑になるので、
医療機関でも薬局でも、
慣れるまでは混乱があるかもしれませんね。

当院は先日「ラゲブリオ登録センター」への登録を行い、
現在処方に向けて手続きを進めております。
もうしばらくで使用できるようなると思われます。

 

また厚労省は先日、
現在使用されている注射薬の中和抗体薬ロナプリーブは
オミクロン株に対する中和活性が低下するとのことで
オミクロン株感染者への投与を推奨されないとしています。

となるとオミクロン株が大半を占める第6波では、
このラゲブリオがどれだけの効果を発揮するのか、
たいへん重要な役割を担っていると思います。

 

以上現時点での状況をまとめてみました。

当院も限られた医療資源で、
この第6波にどこまで対応できるかわかりませんが、
何とかやれることはやっていこうと思っております。

皆様も感染力の非常に強いオミクロン株、
十分にご注意くださいませ。

 

 

吉岡医院  吉岡幹博