ピロリ菌は、胃の中に生息し、胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの原因にもなる細菌です。そのため、早期発見と除菌がとても重要です。「胃の不調が続いている」「健診でピロリ菌の検査や除菌をすすめられた」という方に向けて、本記事ではピロリ菌の特徴や引き起こす病気、検査・除菌方法、治療費の目安までわかりやすく解説します。また、除菌後に必要となる再検査の重要性についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ピロリ菌とは
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは、胃の粘膜に生息するらせん状の細菌です。胃には「胃酸」という強い酸があるため、ほとんどの細菌は殺菌されます。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を産生し、自身の周辺環境をアルカリ性に変えるため、胃の中でも生息可能です。ピロリ菌に感染しても自覚症状はほとんどありませんが、場合によっては胃痛や胸やけなどの症状が出ることもあります。ピロリ菌の感染経路は、まだはっきりとは解明されていません。しかし、免疫力の弱い5歳以下の乳幼児期に感染することがほとんどだとされています。かつては、生水の摂取によってピロリ菌に感染するケースもありましたが、上下水道が整備された現代の日本では、そのリスクはほぼありません。よって現在では、感染者である大人から子どもへの食べ物の口移しといった、経口感染が疑われています。
ピロリ菌除菌が必要な理由
ピロリ菌の除菌を行うことで、胃潰瘍および十二指腸潰瘍の再発率を70~90%低減できると言われています。また、胃がんを発症するリスクを、およそ3分の1に抑えられることがわかっています。
ピロリ菌が胃の中に住みつくと、将来胃潰瘍や胃がんといった病気の原因になるため、除菌治療を受ける必要があります。ピロリ菌に感染すると胃に炎症が起こり、それが長期化すると、胃の粘膜が萎縮したり、胃の細胞が腸の細胞へと変化する「腸上皮化生」が誘発されたりします。特に腸上皮化生細胞は、胃がん細胞へと変化するリスクが高いとされているため、注意が必要です。
一度ピロリ菌を除菌すれば、再感染するリスクはほとんどありません。除菌は若いうちから始めるほど、効果が高いとされています。
ピロリ菌が原因となる疾患
ピロリ菌の感染を放置すると、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こる「慢性胃炎」を発症します。慢性胃炎の状態が長く続くことで、さまざまな病気を引き起こすのです。たとえば、胃や十二指腸の粘膜がただれて、「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」を引き起こすケースもあります。また、ピロリ菌感染が長期にわたると、胃粘膜の炎症や萎縮が進み、胃がんの発生リスクが高まるため、注意が必要です。このほかにも、ピロリ菌が免疫系に影響を与えて、血小板が減少する「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」を引き起こすケースもあります。また、胃や十二指腸に目立った病変がないのに、慢性的な胃の不調が続く「機能性ディスペプシア(FD)」との関連も、指摘されています。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌の検査方法は、大きく分けると、内視鏡を使う検査と使わない検査の2種類があります。内視鏡を使わない検査では、吐く息を使って二酸化炭素を調べる方法のほか、便の抗原や尿と血液の抗体を検出する方法があります。
胃カメラで行う検査
胃カメラで胃の中に炎症や潰瘍がないかを確認すると同時に、胃粘膜または胃の組織の一部を採取して、ピロリ菌感染の有無を調べます。
感染を調べる方法は、以下の3つです。
- 迅速ウレアーゼ試験:胃の組織と試薬を反応させ、色の変化で感染を判定
- 鏡検法(組織染色):採取した胃の粘膜を染色して、顕微鏡でピロリ菌がいるかどうかを観察
- 培養法:採取した胃の組織を、ピロリ菌が育ちやすい環境で5~7日培養して判定
胃カメラを使用する検査の大きなメリットは、検査当日に感染の確定診断から除菌治療まで行えるという点です。
尿素呼気試験
特殊な尿素の診断薬を飲んだ15~20分後に呼気を採取し、その中の二酸化炭素を分析してピロリ菌の有無を判定する検査です。胃酸を抑える胃薬を飲んでいる場合や、ピロリ菌の種類によっては「偽陰性」が出るケースがありますが、精度が高くて体の負担も非常に少ない検査です。外来で気軽に受けられる検査として広く普及しており、今後のピロリ菌検査の主流になるといわれています。
糞便中抗原検査
糞便の中のピロリ菌の有無を調べる検査です。専用の容器で便を採取して、便に含まれるピロリ菌を検出して感染の有無を調べます。採便が必要ではありますが、採血や薬剤投与の必要がないため、身体的な負担がなく検査ができる点がメリットです。また、採血や呼気の採取が難しい子どもの検査にも適しています。糞便中抗原検査は、ピロリ菌感染だけでなく、除菌治療後の効果判定にも使用されています。
血液検査
採血して、血液中のピロリ菌の抗体の量を測定する検査です。抗体の数値が高ければ、ピロリ菌に感染していると判定されます。ただし、ピロリ菌を除菌しても抗体は残ったままになるため、除菌治療歴がある場合は偽陽性になるケースも少なくありません。血液検査は、簡単に調べられるため、健診などのオプション検査として実施されることが多くなっています。
尿中抗体検査
尿を採取してピロリ菌に対する抗体を測定し、感染の有無を判定する検査です。ただし血液検査同様、過去の感染でも抗体の数値は高くなるため、注意が必要です。検査は痛みなどを伴わないほか、15~20分程度で判定できるため、主に人間ドックや健診などで使用されています。陽性と判定された場合、その日のうちに除菌治療を開始できる点もメリットです。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌に感染していることがわかったら、薬で除菌治療します。治療ではまず一次治療として、胃酸の働きを抑える薬と、2種類の抗菌剤を7日間服用します。決められた用法で薬を飲めば、およそ80~90%の確率で、ピロリ菌の除菌が可能です。除菌が成功したかどうかは、治療終了から4週間以上経過した際に、再度ピロリ菌検査を行って判定します。もしもピロリ菌が除菌できていなかった場合は、2種類の抗菌剤のうち、1種類を別の薬に替えて一週間服薬する二次治療を行います。再び治療を行うことで、ほとんどの場合は除菌が可能です。病院によっては、除菌治療を行っている間は禁煙をすすめるところもあります。また、二次治療の際は、アルコールが薬に作用して、頭痛や腹痛を引き起こす可能性があるため、飲酒は避けましょう。
ピロリ菌除菌の費用
ピロリ菌の除菌治療は、胃カメラで胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎などの診断を受け、なおかつピロリ菌の感染が確認されると保険が適用されます。保険適用の場合、一次除菌にかかる薬代はおよそ6,000~8,000円で、別途、胃カメラの検査費用などがプラスされます。二次除菌の費用も、同程度です。自費診療の場合は、検査から除菌まで、およそ2~3万円程度かかります。
ピロリ菌除菌後の判定検査の重要性
ピロリ菌の除菌治療を行ったあとは、必ず判定検査を受けましょう。先ほどお伝えしたとおり、ピロリ菌は一次除菌では除菌できないケースがあるため、除菌できたかどうかを判断する必要があります。もしも、完全に除菌ができていないのに放置してしまうと、感染が続いて胃がんなどの病気を発症する可能性が高まります。判定検査はすべての治療が終了したあと、4週間以上経過してから行います。治療終了後から判定検査までの間隔が長いほど、検査結果の精度が上がるとされているため、治療終了から8週間以上経過してから判定検査を行うクリニックも少なくありません。判定検査では、診断精度の高い尿素呼気試験を用いることが一般的です。
ピロリ菌除菌後は定期的な胃カメラ検査を受けましょう
ピロリ菌の除菌治療が終わっても、定期的に胃カメラ検査を受け、胃の状態を確認することが重要です。ピロリ菌の除菌に成功しても、胃がんのリスクはゼロになるわけではありません。特にピロリ菌の感染で胃の粘膜に炎症を起こしていた場合は、除菌後も胃がんのリスクは高いとされています。病気の早期発見のためにも、年に1回は胃カメラ検査を受けて、定期的に胃の状態を確認しましょう。当院でも、ピロリ菌除菌後の胃カメラによるフォローアップ検査を行っております。胃カメラが苦手な方でも安心して受けていただけるよう、苦痛の少ない検査を実施しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。吉岡医院の胃カメラ検査の詳細はこちら。