風邪症候群
『風邪』は医学的には『風邪症候群』といわれます。その80%以上はウイルス感染が原因ですが、一部に細菌が関与するといわれています。インフルエンザは症状が強いこと、感染力の強さ、二次感染の多さから風邪症候群とは区別されています。風邪症候群では鼻水、のどの痛み、咳、発熱、倦怠感といった症状がよく見られますが、通常は1週間以内に自然治癒します。細菌による二次感染が疑われるとき、高齢者、肺及び循環器系に慢性の病気がある人、糖尿病、腎不全、免疫不全を有する人、妊娠などのハイリスクの人には抗生剤を使用しますが、通常抗生剤は必要ありませんし、使いすぎもよくありません。
インフルエンザ
季節性インフルエンザとしてA(H1N1)(A香港)とA(H3N2)(Aソ連)の2つの型が流行を繰り返していますが、この2つ以外のA型インフルエンザが2009年に流行した新型インフルエンザということになります。
症状は高熱、寒気、呼吸器症状(咳、のどの痛み、鼻水)、関節痛、全身倦怠感などです。迅速診断キットはA型とB型とを区別するだけなので、A型は季節性か新型かを区別することはできませんが、治療はどのタイプでも一緒なので大きな問題にはなりません。
ただし、発症24時間以内だと迅速検査で陰性になることもありますので、乳幼児や妊婦、基礎疾患を持った高齢者などには積極的に抗インフルエンザ薬による治療を行います。
肺炎
肺炎は健康な大人にも起こりますが、高齢者や基礎疾患を有する人で起こると重症化することもある怖い病気です。原因となる菌は肺炎球菌が最も多く検出され、次いでインフルエンザ菌、マイコプラズマ、クラミジアとなっています。抗生剤の効きにくい耐性菌の出現や、肺炎球菌やレジオネラでは重症化することも多く注意が必要です。症状は発熱、咳、膿を含んだ痰、胸痛、呼吸困難などです。重症度判定を行い、軽症の場合は外来治療、中等症は外来または入院、重症は入院して治療を行います。
前立腺肥大症
前立腺は膀胱に接して尿道を取り囲むように存在する大きさ3~4cm程度の臓器です。男性の方で尿が出にくい、残尿感がる、夜間に1から2回ぐらいはトイレに行くなどの症状がある方は前立腺肥大症の疑いがあります。腹部エコー検査で前立腺のおおよその大きさを測定することもできます。血液検査でPSAを測定し、高値であれば前立腺がんの疑いもあるため、専門の病院で詳しい検査を受けていただきます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDはタバコが原因で肺に炎症が起こり、空気の通り道である気道が狭くなる病気です。空気の出し入れが難しくなり、息がしにくくなります。咳や痰の症状が続けば「慢性気管支炎」、炎症が進んで肺胞が壊れてしまった状態を「肺気腫」といい、この2つがもとになって「COPD」になります。COPD患者さんの90%以上に喫煙歴があるので、別名「タバコ肺」とも呼ばれています。
COPDは昔は治療法の無い病気とされていましたが、最近では予防や治療が可能な病気と位置づけられるようになりました。気道を広げて呼吸機能を改善する薬物療法、呼吸筋や全身の機能を改善する運動療法などがあります。
治療の第1歩はもちろん「禁煙」です。COPDでは禁煙をし、治療を開始するのが早ければ早いほど、肺機能の低下が緩やかになります。
心不全
心不全(しんふぜん)とは、心臓のポンプ機能が弱くなり、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態のことを指します。心臓そのものが止まる病気ではありませんが、「心臓の働きが不十分になる」という意味で名づけられています。
心不全になると、血液の流れが滞るために肺や全身に水分がたまり、息切れやむくみ、だるさなどの症状があらわれます。初期には階段を上ったときの息切れや、疲れやすさだけのこともありますが、進行すると横になるだけでも息苦しくなったり、夜間に何度も目が覚めるようになったりします。
原因としては、高血圧、心筋梗塞、心臓弁膜症、不整脈、心筋症などさまざまな心臓の病気が関係しています。また、糖尿病や腎臓病、貧血などの全身の病気や、塩分の多い食事、運動不足、過労、感染症などが悪化の引き金になることもあります。
心不全は、適切な治療と生活習慣の見直しによって症状を改善し、進行を防ぐことが可能です。大切なのは、早期に気づき、継続して治療を行うことです。息切れやむくみ、疲れやすさなどが気になる場合は、早めにご相談ください。
慢性腎不全
慢性腎不全とは、腎臓の働きが長期間にわたって徐々に低下していく状態です。腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分・塩分を尿として排出する、大切な臓器です。また、血圧の調整や骨の健康、赤血球をつくるホルモンの分泌にも関わっています。
慢性腎不全では、腎臓の機能が少しずつ失われていき、初期のうちはほとんど自覚症状がありません。しかし、進行すると、体内に老廃物がたまってだるさ、食欲不振、むくみ、貧血、息切れなどの症状が現れるようになります。
主な原因は、糖尿病、高血圧、慢性糸球体腎炎などで、これらの病気が長年にわたって腎臓に負担をかけることで発症します。また、高齢化や生活習慣の変化も関係しています。
腎機能がある程度まで低下すると、「慢性腎臓病(CKD)」と呼ばれ、さらに進行して腎臓の働きが大きく損なわれると、「腎不全」と診断されます。重度になると人工透析や腎移植が必要になることもあります。
慢性腎不全は、一度進行すると元には戻りませんが、早期発見と適切な治療によって進行を遅らせることが可能です。定期的な血液・尿検査で腎機能をチェックし、必要に応じて食事療法や薬物治療を行うことが大切です。
骨粗鬆症

骨の強度の低下により骨折しやすくなる高齢者の病気です。骨密度が若い人の平均の70%以下に低下した場合や、70〜80%でも過度のアルコール摂取がある場合、喫煙者、家族に大腿骨の骨折をした方がいれば骨粗鬆症と診断し、お薬の治療を開始します。特に女性の方は閉経後エストロゲンという女性ホルモンが低下するために骨粗鬆症になる割合が多く、高齢になってからの骨折は寝たきり生活を余儀なくされることもあることから、早めの検査と治療を受ける必要があります。