京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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京都市で「ABC検診」始まります

2017年6月7日

6月に入りそれほど暑くもなく、
気持ちのいい天気が続いていましたが、
今日は残念ながら雨模様ですね。

ぼちぼち梅雨入りでしょうか。

少しずつ蒸し暑くなってきますので、
これからの季節、
熱中症等にお気を付け下さい。

 

 

さて皆様は、
京都市で新しい胃がんに関する検診が、
始まるのをご存知でしょうか?

その名は、
「胃がんリスク層別化検診」、
通称「ABC検診」です。

なんだかテレビ局みたいな検診名ですが・・・。

皆さんは通常胃がん検診と言えば、
何を思い浮かべられますか?

多くの方はバリウムを使用する、
「胃部レントゲン検査」や、
内視鏡で行う「胃カメラ検査」だと思います。

これらはレントゲンやカメラを用いて、
胃の中を直接的、間接的に観察し、
胃がんそのものを発見する検査です。

しかしこの「ABC検診」はそうではありません。
画像による検査ではなく血液検査です。

胃がんそのものを見つけるのではなく、
胃がんになりやすい人たち、
ハイリスク群を見つけ出す検査なのです。

その点で「胃がん検診」ではなく、
「胃がんリスク検診」と分類されています。

 

 

調べる項目は2つです。
①ヘリコバクター・ピロリ抗体
②ペプシノゲン I と II

①はピロリ菌感染の有無を調べる検査です。
②のペプシノーゲン検査に関しては、
初めて聞かれる方も多いと思います。

 

そこで今回は、

この検査方法は一体何を調べているのか。
その結果が胃がんとどう結びつくのか、
簡単にお伝えしたいと思っております。

 

まず、

胃がんの原因はいくつかありますが、
最も決定的な要因は、
ピロリ菌感染の有無です。

ピロリ菌は幼児期までに感染し、
その後何もしないと、
胃の中にとどまり胃炎を惹き起こします。

逆にその時期に感染が無ければ、
その後の人生で感染する可能性は、
かなり低いとされています。

研究ではピロリ菌に感染がないと、
その人が胃がんになる確率は、
ほぼ0%ということがわかっています。

逆にピロリ菌に感染していると、
年間に0.3%の割合で胃がんになると
報告されています。

つまり10年で3%ということになり、
100人のピロリ菌感染の方がおられると、
10年間で3人の方が胃がんになる計算です。

 

これは結構侮れない数字です。

 

なぜ発癌が起きるかと言いますと、

ピロリ菌感染があると、
胃の粘膜ではピロリ菌の出す毒素で、
慢性胃炎が起こります。

慢性胃炎を起こす原因はいくつかありますが、
ピロリ菌が惹き起こす慢性胃炎は特徴的で、
「萎縮性胃炎」と呼ばれています。

この「萎縮性胃炎」が高度であるほど、
胃がんの発生率が高くなることが、
研究で明らかになっています。

 

つまり、

 

①ピロリ菌感染があるかどうか。

②萎縮性胃炎の程度がどのくらいか。

 

この2つの要因で、
どの程度胃がんになりやすいかどうかを、
分けることができるのです。

 

「どこがABCなんだ!?」

・・・もう少しお待ちください。

 

ヘリコバクタ―・ピロリ抗体検査は、
血液中にピロリ菌の抗体があるかどうか、
測定する検査です。

陽性であれば、
ピロリ菌に感染している可能性が高く、
陰性であれば感染していない可能性が、
高いとされています。

この項目でピロリ菌感染の有無を見ます。

それとペプシノゲンですが、
これにはIとIIの2種類あり、
萎縮性胃炎の指標となるものです。

萎縮性胃炎では、
ペプシノゲンIは低くなり、
ペプシノゲンIIの値が高くなります。

そこでペプシノゲン検査では、
・ペプシノゲンIが70ng/ml以下(低い)かつ、
・ペプシノゲンI/II比が3.0以下を
ペプシノゲン検査陽性と基準を設けています。

つまりペプシノゲン検査陽性は、
明らかな萎縮性胃炎が存在することを
示唆する指標となるのです。

よって、この2つの検査で、

ピロリ菌抗体検査の陰性と陽性、
ペプシノゲン検査の陰性と陽性、
組み合わせると4つのグループができます。

ここでようやくABCが出てきます。

 

●ピロリ菌陰性+ペプシノゲン陰性:A群
●ピロリ菌陽性+ペプシノゲン陰性:B群
●ピロリ菌陽性+ペプシノゲン陽性:C群
●ピロリ菌陰性+ペプシノゲン陽性:D群

 

このようにグループ分けすると、
それぞれの群で胃がんの発生率に、
きれいな差が出たのです。

胃がんの発生頻度/年として、
A群:ほぼ0
B群:1000人に1人
C群:400人に1人
D群:80人に1人
と報告されています。

この場合D群の、
萎縮性胃炎があり、
ピロリ菌陰性に対する解釈ですが、

萎縮性胃炎自体がピロリ菌によって起こるのに、
抗体が陰性(ピロリ菌がいない)とは
どういうことかと思われるかもしれません。

このグループにはもともと、
ピロリ菌がいたと考えれています。

萎縮性胃炎が非常に高度になると、
逆にピロリ菌が棲みつく場所がなくなり、
胃の中からいなくなることがあります。

つまりD群は、
非常に高度の萎縮性胃炎が存在する、
極めてハイリスクな群であると言えます。

そこで、

C群とD群は両方とも高リスク群であることより、
一つのグループと分類され、
ピロリ菌抗体の有無にかかわらず、
ペプシノゲン検査陽性はまとめてC群となりました。

その結果、

A群は低リスク群
B群は中リスク群
C群は高リスク群

と分類されるということになります。

 

ということでABC検診をまとめると、
下の表のようになります。

 

ABC検診

 

 

A群の方は胃がんのリスクは低く経過観察、
B群、C群の方は要精密検査となり、
二次精密検査医療機関を
受診していただくことになります。

そこで胃カメラを実施し、
胃がんがないかチェックするとともに、
ピロリ菌の除菌などを行います。

 

この検診では指定医療機関に検査を申し込み、
その医療機関に行って採血を実施し、
後日結果が郵送されてくるとのことです。

そして、
ご自身がどの群に入っているのか、
知ることができます。

 

なおA群の方の中にも、
ピロリ菌の過去の感染や
偽陰性の可能性もあります。

心配するほどではないと思いますが、
人生で一度は胃カメラを受け、
萎縮性胃炎のないことを確認されて下さい。

 

以上のような流れになります。
とても分かりずらい説明になったと思いますが、
ご自身に胃がんのリスクがどの程度あるのかを、
調べるための検診ということです。

 

京都市から受診券などが、
送られてくるわけではないそうですので、
自主的に調べて受けなくてはならないようです。

皆様も下記の要綱を参考に、
該当する年齢の時に、
忘れずに受診なさってください。

 

 

【京都市ABC検診実施要項】

平成29年6月15日より指定医療機関にて
受付を開始されます。

1.対象者
京都市に住民登録があり、各年12月31日までに、
40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳の
各年齢に到達される方。

下記の方は対象外です。
① 過去に「胃がん」と診断された方
② 過去に「胃切除術」を受けたことのある方
③ 過去に「ヘリコバクタ・ピロリ菌」を除菌したことのある方
④ 現在「胃潰瘍や十二指腸潰瘍」で治療中の方
⑤ 現在「腎不全」の治療中または経過観察中の方

*受診は一生に一回のみです(自己申告)

2.実施期間
1年通じて実施

3.自己負担金
500円
(免除対象となる方がおられます)

4.受診方法
指定医療機関へ直接電話でお申し込みください。
※受診券や予約票はありません。

 

当院は指定医療機関です。
その他の詳細は下記のサイトへアクセスしてください。

http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000217209.html