京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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糖尿病の治療で大切なこと

2019年7月27日

いよいよ梅雨明け、
夏本番ですね。

 

7月上旬は例年と比べると、
少し気温が低めで、
過ごしやすい日が続いておりました。

 

個人的には今年の夏は冷夏か、
ちょっとは暑くないと何か物足りないかなと
思いましたが余計な心配でした。

 

いざ暑くなると急に猛暑日となり、
たちまち体はしんどくなり、
さすがに涼しい方がよかったなと思います。

 

ゲリラ豪雨、台風と
これからの天気はとても不安定です。
皆様も体調管理と共に、
災害等にも十分お気を付けください。

 

 

 

 

さて今回は、
糖尿病の治療についてのお話です。

 

当院にも糖尿病の患者様は
次第に多くなってきています。

 

健診で引っかかった
糖尿病なりかけの方から、
インスリン自己注射を行う方まで、
治療の内容もそれぞれ異なります。

 

 

現在糖尿病の治療薬には
主に以下の種類のものがあります。

 

① インスリン抵抗性改善薬
・ビグアナイド薬(メトグルコなど)
・チアゾリジン薬(アクトスなど)

 

②インスリン分泌促進薬
・スルホニル尿素薬(アマリールなど)
・即効型インスリン分泌促進薬(グルファストなど)
・DPP-4阻害薬(ジャヌビアなど)

 

③糖吸収・排泄調節薬
・α‐グルコシダーゼ阻害薬(セイブルなど)
・SGLT2阻害薬(スーグラなど)

 

以上が飲み薬で、
次のものが皮下注射になります。

 

・インスリン
・GLP-1受容体作動薬

 

 

このように近年特に有効な、
内服薬や注射薬が出てきて、以前に比べて
かなりコントロールできるようになりました。

 

それでもなお、
治療していても思いのほか効果が出ない方、
どんどんお薬が増えていく場合もあります。

 

飲み薬だけでは良くならず、
インスリン治療を余儀なくされる場合も
少なからずあります。

 

また治療困難な症例や、
治療に迷う症例などは、
日常診療でよく遭遇します。

 

そのような時に私は、
月に一度西陣病院で開催されている、
「西陣糖尿病オープンカンファレンス」に
出席し相談しています。

 

 

「西陣糖尿病オープンカンファレンス」は、
西陣病院院長、専門医、看護師、薬剤師、栄養士さんが
参加して行われる症例検討会です。

 

これだけでもご相談には十分すぎるメンバーなのですが、
そこに府立医大から糖尿病の教授先生がお越しになり、
直接カンファレンスに参加されています。

 

※詳しくは、過去のブログを見てください。
(「西陣糖尿病カンファレンス」に参加して)

 

ここで私は患者様の症例提示を行い、
診断が間違っていないか、今後どうすれば良いかなど、
検討していただいています。

 

たいていはお薬をいっぱい使っているのに、
HbA1cは改善しないなど、
治療に関する相談をさせていただきます。

 

私としては、
「この薬を止めて、これに変えてください」
というようなアドバイスを期待しているのですが、

 

先生方からは、
「この方はどのようなライフスタイルですか?」
と聞かれることがよくあります。

 

食事は何時にどのようなものを食べているのか、
仕事は夜遅くまであるのか、外食が多いのか、
家族構成はどうなっているかなどです。

 

そういえばこの方はどんな仕事だったかな?
普段どのような食事をされているのか、
アルコールはどんなものを飲まれるのかなどなど、
基本的な情報が聞けていないことに気づかされます。

 

 

医者はついつい忙しさのため、
「患者様」ではなく「病気」だけを
診ているときがあると思います。

 

これはとても良くないことですが、
無意識にやってしまっていることもあります。

 

HbA1cや血糖値、身長、体重、BMIなど、
糖尿病には治療の指標となる数字があります。
これらの数字だけで治療をしていることもあります。

 

しかし糖尿病などは、
生活習慣病の一つといわれるとおり、
個々の患者様で背景も原因も異なります。

 

食事や仕事を含めた
ライフスタイル自体を把握することが、
治療の第一歩となります。

 

もし食事の内容に改善点があれば、
栄養士さんに相談してみるのもいいでしょう。

 

食事は野菜から食べ最後に炭水化物をとる、
糖質の少ないごはんやパン、
ビールはグリーンラベルのものに替えてみる。

 

そのような基本的なことで、
お薬を一つ減らせるぐらいの
治療効果がでることも少なくありません。

 

本来多くの糖尿病は
食事のとりすぎや運動不足などによる
内臓脂肪の増加から起こってきます。

 

それをメタボリックシンドローム、
通称メタボというのですが、
生活習慣病といわれる所以です。

 

ならば食事・運動療法が基本ということは、
どなたにでも簡単にわかることですが、
これがなかなか実行できないのです。

 

医師側はその人それぞれの生活習慣を
聞いて分析し問題点を見出し、
そこにアドバイスや指導を行うのですが、
日常診療では十分な時間が取れないことも多いです。

 

また自分の生活習慣を変えるように言われても、
糖尿病のように普段は痛みや不調を感じない病気では、
モチベーションが上がらないのも事実です。

 

となると、医療者側も患者様側も、
お薬で対応しようという、
流れになってしまいがちです。

 

 

カンファレンスではもちろん、
最新の治療法や検査を用いた検討もされ、
新しい知見は開業医には大変勉強になります。

 

しかし原点に戻り、
患者様の生活背景に問題がないか、
改善できる点は無いかということも
治療の第一歩として大変重要ということも
このカンファレンスで再認識させられました。

 

糖尿病の治療は簡単なようで複雑です。
それは治療の選択肢がたくさんあることに加え、
患者様それぞれの背景異なるからです。

 

いいお薬が出れば出るほど、
本来の治療の原点である生活習慣改善を忘れ、
薬の力で強引に治療してしまうこともあると思われます。

 

お薬は最終的には必要となることも多いですが、
まずはそれぞれの患者様の生活習慣に合った治療を
考えることが重要なのです。

 

 

吉岡医院  吉岡幹博