京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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膵がんは早期発見が大事(その2)

2022年9月7日

9月に入っても残暑厳しいですが、
皆様お変わりありませんか?

コロナ第7波もピークを越え、
一時期の患者様が殺到する状況は
ようやく落ち着きを見せています。

皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 

 

さて今回は、
前回のテーマの続きとなります。

前回は膵がんの予後の悪さと、
その中でも早期に発見された膵がんは、
まだ治療成績が良いことをお示ししました。

今回はいかに早期の膵がんを発見するのか、
その方法と画像検査についてまとめてみます。

 

まず、膵がんには高リスク群が存在します。

膵がん診療ガイドライン(2019年版)によると、
膵がんのリスク因子として以下のものがあります。

・生活習慣(糖尿病、肥満)
・膵疾患(慢性膵炎、IPMN、膵のう胞)
・嗜好(喫煙、飲酒)
・職業(塩素化炭化水素ばく露)

に加えて、
・家族歴(膵がん家族歴、家族性膵がん)
・遺伝性膵炎、遺伝性膵がん症候群

があるとされています。
全膵がんの約10%は、家族歴を背景に
発生すると報告されています。

第一度近親者内に膵がん罹患者が1人いると、
膵がん発症リスクは4.5倍、2人の場合は6.4倍、
3人以上いる場合は32倍となるそうです。

家族歴は大いに関係しているのですね。

 

この様な膵がん高リスク群の方に対し、
無症状のうちから検査を行うと、
早期膵がんの方を発見できる可能性があります。

 

実際に行う検査としてはまずはMRIです。
MRIの撮影法の一つで胆管と膵管を選択的に
描出する方法としてMRCPがあります。

また胃カメラの先端に超音波がついた装置を
超音波内視鏡(EUS)といいますが、
それを用いて胃の中から膵臓にエコーを当てます。

膵がん高リスク群の方にこれらの検査を実施し、
特に異常が無ければ1年後まで経過観察となり、
その後も1年毎に同じ検査を繰り返します。

逆に何かしらの異常が見つかれば、
さらなる検査を行いがんの有無を確かめます。

 

膵臓にはよくのう胞性病変が見つかります。
のう胞性病変というのは、
液体の入った袋のような病変を指します。

のう胞自体が癌化する割合は低いのですが、
膵がん発症のリスクファクターであるとされています。
膵のう胞がある方は要注意ということですね。

またのう胞自体の大きさ、形、のう胞壁の厚みなど、
”ある特長”を持ったのう胞に関してはがんのリスクとなり、
治療や経過観察の方針が決められています。

 

以下に挙げた特徴がリスクありとされています。

 

High-risk Stigmata(HRS)(悪性を強く示す所見)
① 閉塞性黄疸を伴う膵頭部のう胞性病変
② 造影される嚢胞内の充実成分
③ 主膵管径 ≧ 10mm

これらの特徴を持つものは、
がんが存在してる可能性が高く、
外科的に切除となることがあります。

 

Worrisome Feature(WF)(悪性の疑いを示す所見)
① 膵炎症状
② 嚢胞径 ≧ 30mm
③ 肥厚し造影される嚢胞壁
④ 主膵管径5-9mm
⑤ 造影効果のない壁在結節
⑥ 尾側に閉塞性膵炎を伴う主膵管狭窄
⑦ リンパ節腫大

これらの特徴を持つのう胞性病変は、
さらなる検査を行いがんの疑いが無ければ、
3~6か月の画像による経過観察を行います。

 

膵臓にできるのう胞性の病変として、
最近注目されているのがIPMNという病変です。

IPMN(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)は
日本語に直すと「膵管内乳頭粘液性腫瘍」という
大変難しい名前になります。

日本語ですら長くて覚えにくい病名ですので、
多くの医師はIPMNと英語病名の頭文字で
この病気を呼んでいます。

近年はMRCP等の画像診断の進歩により、
この病気が見つかる頻度が多くなりました。

 

IPMNは膵管内に乳頭状に増殖する膵腫瘍で、
粘液を産生することでのう胞状となることが多く、
膵管が太くなるなどの変化がみられることもあります。

いわゆる「通常の膵臓癌」とは違い、
良性から悪性まで様々な段階があり、
経過中に悪性化することがあります。

 

IPMNには主膵管型と分枝型あり、
主膵管型は悪性度の割合が高く、
主膵管の太さが10㎜を超えると手術適応となります。

分枝型では先ほど挙げたWorrisome Featureの有無で、
慎重な経過観察が必要となります。

あまり聞きなれない名前かと存じますが、
膵IPMNという名前、
ひょっとするとどこかで聞かれるかもしれませんね。

 

膵がんの早期発見で重要な検査は、
先も述べましたがMRCPとEUSです。

この2つの検査を定期的に行い、
がんが直接見えない早期の時でも、
癌の存在を疑うことができます。

CTはどうかということですが、
もちろん悪いことではありませんが、
MRCPなどに比べると早期の診断は難しいです。

またCTには被爆の問題もありますので、
毎年フォローアップのため検査していくのは、
あまり向いていないと思います。

 

ということで、
今回のブログでは2回にわたり、
膵がんは早期発見がとても大切ということを
お話いたしました。

 

・まとめです。

① 膵がんは極めて予後不良の癌である
② 早期の膵がんには治療成績がよい群がある
③ 早期の膵がんを発見する頻度は極めて低い
④ 膵がんには高リスク群が存在する
⑤ 無症状のうちから検査を行い早期の膵がんを発見する
⑥ 膵のう胞はがんのリスクファクターである
⑦ 膵IPMNがある方は特に注意が必要
⑧ 検査にはMRCPとEUSが有効

 

長くなりましたが最後まで
お読みいただきありがとうございました。

難しい専門用語も多く
詳しい説明を省略したところも多いのですが、
何となく雰囲気を感じていただければと思います。

ご参考になれば幸いです。

 

 

吉岡医院  吉岡幹博