京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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最近の糖尿病治療薬について

2023年8月27日

残暑厳しい毎日が続いております。
当院の外来にも熱中症を思わせるような症状の方や、
夏の疲労が蓄積した方も多くいらしゃいます。

診察室で「体調はどうですか?」とお聞きするのですが、
多くの方は「悪い!」と答えられます。
「そうですよね…。」と返します。

8月もいよいよ終わりです。
暑さもあと半月ほどの我慢でしょうか。

 

 

今回は最近の糖尿病のお薬について、
少しご紹介したいと思います。

糖尿病の薬といえば、
私が医師になった25年前といえば、
あまり有効なお薬はありませんでした。

それほど治療に有効な薬剤がなく、
糖尿病は徐々に悪化していく進行性の病気であり、
医師としてやりがいを感じなかった記憶があります。

それが今や医療は進歩し、
糖尿病でもきちんと治療すれば健康な方と同じように
寿命を全できる病気に変貌しつつあるのです。

特にここ10年くらいの糖尿病薬の開発は目覚ましく、
まさに医学の研究と進歩の賜物であると思われます。

 

ではこれまでに出ている糖尿病薬を
薬の歴史とともに見てみることにしましょう。

 

〇 1990年ころまでの従来からの薬剤

インスリン
血糖降下作用のある注射製剤で
即効性のあるもの、持続するものなど
作用時間により種類が多くあます。

余り厳格にやりすぎると低血糖を引き起こすので、
コントロールには経験と知識が必要です。

スルホニル尿素剤(SU薬)
膵臓に働きかけインスリン分泌を起こさせるものです。
薬剤名:グリクラジド、グリメピリドなど

ビグアナイド薬
インスリン感受性の改善する薬剤として、
肥満の方に今でも第一選択として使用されます。
薬剤名:メトホルミン

安価なお薬で医療経済的に重宝されています。

 

〇 2010年ころまでの薬剤

・α-グルコシダーゼ阻害剤
糖の吸収を抑えることにより食後の高血糖を抑制
食前に服用します。
薬品名:ボグリボース、ミグリトールなど

・チアゾリン薬
インスリン抵抗性の改善
最近は副作用より使用される機会が減少しています。
商品名:アクトス

・グリニド薬
速効型インスリン分泌促進薬
食後に高血糖になる方に効果があります。
薬品名:ミチグリニド、レパグリニドなど

 

〇 2010年ごろ以降の新しい薬剤

・DPP-4阻害薬
・GLP-1製剤
・SGLT2阻害薬
・イメグレミン

これらの比較的新規の糖尿病薬の出現で、
糖尿病治療を低血糖の副作用を減らしながら、
より効果的に行えるようになりました。

作用機序などは複雑なものもありますが、
それぞれの薬剤につき簡単に説明します。

 

・DPP-4阻害薬

インスリン分泌促進ホルモンであるGLP-1を
分解するDPP-4を阻害することにより、
GLP-1濃度を高め血糖降下作用を発揮します。

低血糖になるリスクが低く安全性が高いことより、
高齢者でも副作用が少なく、
第一選択薬として使用されることが多い薬です。

薬品名:シタグリプチン、リナグリプチン、
アナグリプチンなど、種類は多数あります。

 

・GLP-1製剤

GLP-1受容体作動薬と呼ばれるもので、
各臓器に様々な有益な作用をもたらします。

主な効果として、
インスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、
胃内容物排泄遅延、食欲抑制作用、
脂肪肝改善、腎保護作用などがあります。

最近は糖尿病に対する高い有効性が認識され、
特に注射薬の需要が急増しており、
供給が追い付かない事態となっています。

週1回の注射薬として、
デュルグルチド(商品名トルリシティ-)が
よく使われています。

経口薬としてセマグルチド(商品名リベルサス)もあり、
品薄となっているデュルグルチドの代わりに
使用されるケースが多くなっています。

 

またGLP-1と同じ作用のGIPというホルモンを加えた、
GIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ)という注射薬も、
今年6月より新たに発売されています。

こちらは新薬でこの先1年は長期投与ができず、
1度の通院で2週間分しか処方できないにもかかわらず、
早くも市場では品薄となっているようです。

こちらはトルリシティ-と同じ注射容器を使用しており、
トルリシティ-の需要の高まりによる供給不足の
影響を受けているようです。

この薬剤は食欲低下作用もあり、
体重を減らしながら効果的に糖尿病の治療ができるため、
肥満の方を中心に需要が見込まれます。

 

・SGLT2阻害薬

腎臓での尿への糖分の排泄を促進することにより、
血糖値を低下させる薬剤です。
高齢者には脱水に注意が必要になります。

最近は心不全の治療薬としてもつかわれることもあり、
タンパク尿のの改善など腎保護作用もあり、
副次的な効果も多く期待される薬剤です。

薬品名:スーグラ、フォシーガなど多数あります

 

・イメグリミン

ミトコンドリアを介した作用でインスリン分泌促進、
インスリン抵抗性改善により血糖降下作用を発揮します。
作用機序は難解で私には説明できません。

メトホルミンと構造がにていますが、
メトホルミンの副作用である乳酸アシドーシスは
きたさないとされています。

現時点で投与の適応は限られているようですが、
今後効果的な使用法の検討がなされていくと思われます。

商品名:ツイミーグ

 

 

以上最近の糖尿病治療薬について、
私のわかる範囲で
ごく簡単にまとめてみました。

私は糖尿病の専門ではないので、
あまり細かいところまではわからないのですが、
月に1度近くの西陣病院で開催されている、
糖尿病の勉強会にも顔を出し教えていただいています。

皆様のご参考になれば幸いです。

 

 

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