京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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痔核、裂肛の保存的治療について(②生活指導編)

2024年9月7日

皆様こんにちは。
吉岡医院の吉岡幹博です。

今回は前回に引き続き、
痔核、裂肛の保存的治療について
簡単にご説明させていただきます。

前回が注入軟膏や内服薬といった、
お薬による治療の方法についてでしたでの、
今回は生活指導について述べたいと思います。

 

皆様ご存知のように、
痔は大腸がんなどの悪性疾患はありません。
良性疾患という範疇に入り、
多くの方が多かれ少なかれ持っている病気です。

痔の原因に確定的なものはありません。
主には食生活や排便習慣など、
日常的な習慣から起こってくることも多いです。

便秘がちな人、下痢がちな人、
アルコール摂取が多い方など、
さまざまな原因で起こってくる、
一種の生活習慣病と考えるといいと思います。

従ってお薬を使った治療と同じくらい、
普段の生活習慣を改善することには意味があり、
予防できたり、悪化を防ぐことができたりします。

それでは我々が普段考え、
患者様にどのような説明を行っているか、
日常生活の注意点などをご説明いたします。

 

生活指導の内容です。

① 便秘・下痢を防ぐ
② 正しい排便を行う
③ 肛門の衛生について

それではそれぞれの内容を
順番に見ていきたいと思います。

 

① 便秘・下痢を防ぐ

まず便は有形で柔らかく、
少し熟したバナナぐらいの
硬さがいいとされています。

便秘が良くないというのは、
皆様も感覚的にわかると思いますが、
実は下痢も良くありません。

便秘があるかと言って下剤を多くとり、
下痢の状態で排便をしているのも、
肛門にとっては大きな負担になります。

 

便秘にならない様にするには、
食生活としては肉類の過剰摂取は避けてください。
適度な繊維質の摂取が望まれます。

ここで注意が必要なのは、
食物繊維はとればとるだけいいと思っている方が、
案外多いということです。

特に生野菜は消化が悪いので、
取りすぎると便秘や下痢の原因になります。
あくまでもバランスよく摂るようにしてください。

 

下痢に関しては、
冷たい飲み物の摂取やアルコール多飲が
原因になっていることがあります。

大酒家の方で下痢の方は、
アルコール摂取を控えると、
下痢が改善することがあります。

また香辛料の強い食事が
下痢の原因となることがあります。

刺激物は腸管の動きに影響を及ぼすこともあり、
特に下痢気味の方は注意が必要です。
併せてお気を付けください。

 

また最近は1日2食しか食べない、
朝食を摂る習慣のない方もおられるかと思います。
しかし朝食をとることはとても大事です。

胃結腸反射というものがあります。
お聞きになったことはありますでしょうか。

胃結腸反射とは、
胃に飲食物が入って大腸の蠕動運動が活発になり、
便が直腸に運ばれて便意を感じる生理的な反応です。

朝食を摂ることによりこの反応をもたらし、
朝のスムーズな排便に繋がると考えられます。

朝食を摂らないとなかなか便意が起こらずに、
トイレで長い時間こもることとなり、
無理やり排便するということも起きてきます。

それなので、
水分やヨーグルトだけでなく、
朝はしっかりした食事をとるように心がけましょう。

 

便秘にならない様に便秘薬の使用も重要です。

便秘薬の種類には、
「浸透圧性下剤」と「刺激性下剤」があります。

基本は便の水分を増やして便を柔らかくする
「浸透圧性下剤」をメインで使用します。
酸化マグネシウムがそれにあたります。

刺激性下剤は基本的にはあまり使わない様にして、
他の薬でうまくいかないときに取っておきます。

下剤の種類や使用法については、
説明すると膨大な内容になってしまいます。
知りたい方は過去の当院ブログも参考になさってください。

よく使われる便秘のお薬について – 医療法人博侑会

 

② 正しい排便

便意を感じてからトイレに行くようにしましょう。
トイレでは3分から5分程度で排便を済ませましょう、

患者様によっては時間を決めて、
朝仕事に行く前に出してしまおうなど、
自分の生活スタイルに排便を合わせる方がおられます。

便意が無いのですぐにトイレから出られず、
スマホなどを見ながら長い時間かけて用を足すのは
排便習慣としては良くないと思われます。

5分くらいで出なければ、
一旦あきらめてトイレから出ましょう。

便は出したくなった時にトイレに行って、
あまりいきまずに優しく排便し、
短時間で済ますことが重要です。

 

③ 肛門衛生

最後は肛門はきれいにすべきかということです。
最近はトイレにウォシュレットが標準でついていて、
常時使用される方も多いと思います。

肛門の専門医の間では、
ウォシュレットは必ずしもいいものではない
と考えられていることが多いと思います。

頻回の使用による肛門上皮への刺激は、
時に皮膚炎や搔痒症(肛門のかゆみ)の
原因となる可能性があります。

また強い水勢で肛門に当てることで、
一部当たった水を直腸内に取り入れ、
浣腸の要領で排便をされる方もおられます。

この様な行動は結果的に、
ウォシュレットによる刺激がなければ
排便が誘発されず排便障害に繋がります。

ウォシュレットを使用される際には、
弱い水圧で軽く洗浄し、
ペーパーでふき取る程度が良いでしょう。

その他ウォシュレットには感染のリスクもあり、
コンビニや公衆便所での使用は、
できれば控えられた方がいいと思われます。

肛門衛生については、
あまり神経質にならずに優しくふき取る程度とし、
入浴の際に軽く洗って清潔にすれば十分のようです。

 

肛門の生活指導については、
専門の医師それぞれの考え方で、
少しずつ異なることが多いです。

肛門科自体が他の診療科と比べると、
学問として完成していない部分もあり、
考え方や治療法も様々あります。

従って各医師が実践を積まれた医療機関や、
ご自身での診療の経験などにより、
考え方や治療にも多少の相違、片寄りがあります。

今回紹介した内容は先日の肛門科の講演会で、
肛門科の大御所の先生と若手の先生の座談会をもとに
私が視聴しまとめたものです。

私にとっても勉強になる内容が多かったので、
ご紹介させていただきました。
皆様のご参考になればうれしく思います。

 

吉岡医院  吉岡幹博