京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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セレキノンに続きトランコロンも販売中止へ、その理由は…

2022年6月7日

今日は晴れ間も見えすがすがしい天気でしたが、
ぼちぼち梅雨入りでしょうか。

だんだんと蒸し暑くなって来ています。
皆様も脱水症状や目に見えない疲労の蓄積には
ご注意ください。

 

 

さて前回のブログで、
過敏性腸症候群に使用する「セレキノン」が
販売中止になる話をいたしました。

その時にも少し触れていましたが、
同じ過敏性腸症候群で使用する「トランコロン」も
販売中止になることが決まったようです。

 

トランコロンは抗コリン薬の仲間で、
副交感神経遮断効果に基づく消化管運動抑制作用、
消化管の攣縮緩解作用を持つとされています。

その鎮痙作用は上部消化管に対するより、
下部消化管により強くあらわれることが確認されており、
過敏性腸症候群の腹痛に対して有効とされるお薬です。

当院でも過敏性腸症候群の腹痛や不快感の強い方に、
よく使用している内服薬の一つです。

特にセレキノンに出荷調整がかかり、
事実上使用できななってからは、
セレキノンの代わりに処方してきた薬です。

セレキノンと同じように効果のあるお薬で、
スイッチした大半の患者様で有効であったことより
同じ位置づけで使用してきました。

そんな貴重なトランコロンまでもが、
同じ時期に販売中止となったのです。
セレキノンと同じように昔からあるお薬です。

なぜこのタイミングで…、
不思議と思いませんか。

 

先週アステラスのMRさんが当院に来られました。
トランコロンの販売中止を伝えるためです。

理由はと聞くと、
もともと治療のエビデンスが低い薬品で…、
などと歯切れ悪く仰りました。

エビデンスレベルの低いお薬なんて、
市場に山ほど出回っています。
それなのになぜトランコロンなのですか、と聞くと、

最終的には会社の方針で…。
というようなことを仰りました。

 

やはり決定的な理由は無いようです。

 

聞いてみるとトランコロンには
全く同じ成分のジェネリックはないそうです。

似た成分のジェネリック医薬品は出ているようですが、
あまりメジャーではない製薬会社からでした。

アステラスのMRさんも言いにくそうに、
トランコロンの代わりにその会社が供給できるかというと、
難しいのではないかとのことです。

 

つまりトランコロンはアステラス製薬が、
単独で製造販売してきたお薬なのです。

セレキノンの場合はジェネリックが存在し、
そのジェネリックがメーカーの不祥事販売できなくなり、
セレキノンの需要が高まったという経緯があります。

しかしながらトランコロンの場合は、
ジェネリックメーカーのあおりを受けていないので、
ひとえにアステラスが放棄したと言えます。

 

ではなぜ放棄するのか…。

これは前のブログでも触れたことですが、
私の推測ですが、
採算が合わないからだと思うのです。

 

セレキノンが販売中止になることにより、
セレキノンの代わりとなるトランコロンの需要が
おおきく跳ね上がることになります。

メーカーとしてはこの昔からある薬価の低い薬に、
需要を賄うだけの生産体制を構築する設備投資が、
割に合わなかったのだと思います。

 

これはセレキノン販売中止の時よりも、
少々たちが悪い気がします。

アステラスは大手製薬メーカーであるわけですから、
例え採算が低いお薬に対してもしっかり供給し、
患者様や医療機関が困らない様にする責務があると思います。

セレキノンにしてもトランコロンにしても、
過敏性腸症候群の腹痛に対する治療薬としては、
代わりが効かないお薬です。

その数少ない薬が一度に2種類も販売中止になる、
こんなことは今までになかったことです。

 

製薬メーカーも2年ごとの診療報酬の改定では、
毎回目の敵のように薬価を下げられています。

この国のやり方は本当に厳しいと思います。
実体経済を無視して社会保障費を下げる大前提だけで、
診療報酬並びに薬価の改定を行っているからです。

財源がないためにこのようなやり方を
馬鹿の一つ覚えのように繰り返していても、
どこかで頭打ちが来て閉塞するのは目に見えています。

ただアステラス製薬といえば、
国内で3番目に大きな製薬会社です。
製薬メーカーとしての責務を果たしてほしいです。

 

恐らくこのような昔からあるお薬は、
一旦市場から姿を消すと、
復活は厳しいのではないでしょうか。

また新たに別のお薬として出す場合には、
また治験などを経て認可、販売されるわけですから、
エビデンスが低いことを考えると難しいかもしれません。

ということは野生生物で言うと、
絶滅するということでしょうか。

 

一体今薬品の中に、
どれだけの絶滅危惧種が潜んでいるのでしょうか。

今まで当たり前に使っていた薬がなくなるのは、
現場で治療に当たる我々にはかなり深刻な問題です。

今後このような出来事が連鎖的に起きないかどうか、
薬業界に詳しくない私は不安に思っています。
何より患者様が困るのが一番良くないことです。

国も何とかするべきです。
患者様のためです。

 

 

吉岡医院  吉岡幹博

関連ブログ
「セレキノンが販売中止になるという衝撃」(2022年5月27日)