京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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当院での胃アニサキス症最近の4症例について

2022年6月17日

近畿地方も14日に梅雨入りしましたね。
例年より遅い梅雨入りだそうですが、
これから暑くなってきますね。

6月は祝日が無く疲れがたまります。
皆様も適度に休憩しながら水分をしっかりとって、
脱水や熱中症にもご注意ください。

 

 

さて今回は、
当院でこの1年ほどの間に治療した、
胃アニサキスの症例についてご報告いたします。

 

アニサキスは寄生虫(線虫)の一種です。
その幼虫(アニサキス幼虫)は、長さ2~3cm、
白色の少し太い糸のように見えます。

アニサキス幼虫は、
サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの
海にいる魚介類に寄生します。

その魚の種類は案外多いので、注意が必要です。

以下のサイトに載っていますが
48魚種からアニサキスの幼虫を検出したそうです。

魚種別アニサキス寄生状況について

 

アニサキスの幼虫は寄生している魚介類が死亡し、
時間が経過するともともといる内臓から筋肉に
移動することが知られています。

少し時間がたったアニサキスがいる魚を
刺身やお寿司などにして生で食べると
アニサキスが胃の中に入り食中毒を起こします。

 

症状は軽い腹痛を伴うケースから、
激痛、腸閉塞に至るケースなど、さまざまです。

アニサキスはヒトの体内に入ると
約1週間で死んでしまいますので、
全くの無症状で済むこともあります。

治療は内視鏡により除去することです。
除去後間もなく症状は治まります。
薬で症状を抑えることもできます。

食べ物からアニサキスが胃に入り、
胃の粘膜にかみこみ炎症を起こすこの病気は、
胃アニサキス症といいます。

 

それでは当院で経験した
実際の胃アニサキス症の症例について
ご報告いたします。

 

症例1. 30代 男性

前日の晩御飯でスーパーで購入したしめさばを食べて、
その夜から胃痛が出現し、翌朝当院を受診しました。

アニサキスの場合痛みの原因は、
アニサキスが胃粘膜にかみこむ物理的な痛みより、
アレルギー反応による痛みが主に起こります。

従って蕁麻疹が出ている方もおられますが、
この方にはアレルギー症状は見られませんでした。

なんと今回で3回目だそうです。
過去2回とも胃カメラで除去されています。
緊急内視鏡を行いました。

 

 

胃体下部大弯後壁寄りの場所に、
頭が胃粘膜にかみこんだアニサキスを認めます。
(白矢印)

 

 

鉗子で把持してそっと
胃の粘膜から引き抜きます。
これで終了です。

 

症例2. 20代 男性

昨日の夕方17時ころにサバの刺身を食べ、
その晩の深夜3時から5時に上腹部に強い胃痛があり
当院を受診されました。

この方は今回が初めてだそうです。

夕方にサバの刺身、同日深夜から胃痛という、
極めて典型的な胃アニサキス症のパターンです。
迷わず緊急内視鏡を行います。

 

 

同じく胃粘膜にかみこんだ、
アニサキスを見つけました。

 

 

鉗子でちぎれない様に注意しながら
胃粘膜から引き抜きます。
これで治療終了です。

 

症例3. 10代 男性

前日の晩しめさばと、ヒラメ、鮭を焼いて食べたそうです。
当日朝から急な胃痛で目が覚め、
その後痛みが増強したため来院されました。

前日にサバの摂取と明け方から腹痛とのことで、
キーワードがそろっています。
もちろん緊急内視鏡です。

 

 

よく見ると手前とその奥に、
2匹アニサキスがいるのが分かります。
1匹とは限らないので注意深い観察が必要です。

 

 

まずは手前の方から摘出を行います。
続いて奥のものも順番に取り除きます。

 

 

これで治療完了です。

 

症例4. 50代 男性

前日夕食にヒラメの刺身をご自身で調理して食べ、
就寝30分後より胃の不快感と痛みを感じるようになりました。
また気が付くと頚や脇に蕁麻疹が出たとのことです。

蕁麻疹は1時間ほどで改善したとのことですが、
その後も胃の痛みが断続的に続いたため
当院受診されました。

 

今回はサバではなく生のヒラメということですが、
胃痛、蕁麻疹も出現していることから
アニサキスが強く疑われます。

従って緊急内視鏡を行います。

 

 

この方も2匹見つかりました。
他にもいるかもしれませんので
注意深く胃の中を探します。

 

 

よく探してみるとやはりもう1匹いました。
細くて透明でわかりにくい時もありますが、
粘膜が赤くはれているところは要注意です。

 

 

まずは見失わないうちに取り除きます。
アニサキスはかみこんでいるので
動きますが逃げたりはしません。

 

 

残りの2匹も順番に取り除きます。
基本生け捕りしますが、
特にその先にどうすることもありません。

 

最後にもう一度見まわして、
アニサキスがいないことを確認します。
いなければこれで終了です。

カメラを引き抜き、
胃から食道に戻ろうとしたとき、
何か気配を感じました。

 

 

よく見ないと分かりませんが、
食道と胃の境の狭くなっているところに、
僅かに光沢のある筋が見えました。

もう1匹アニサキスが潜んでいます。
食道下端のとても摘出しずらい場所です。
でも放置するわけにはいきません。

これが最後の戦いです。
息を止めて集中して鉗子で把持します。

 

 

何とか捕まえました。
ちぎれてしまわない様に
慎重に摘出しました。

これで本当に終了です。
4匹は少し大変ですね。

 

以上最近当院で経験した
胃アニサキス症の4症例をご報告いたしました。

これだけアニサキスの写真が並ぶと、
普段平気な私でも少し気持ち悪いです。
皆様にはちょっときつい画像かもしれません。

 

どの症例も前日の食事でサバなどの魚を生で食べ、
当日の深夜から翌朝にかけて発症しています。

従って診断は比較的容易ですが、
治療には緊急内視鏡で処置が必要となり、
その点が医療機関の負担にはなります。

予後は良く摘出後は症状改善し、
後の通院も必要ありません。

ただ一度アニサキスで痛みが出た方は、
アニサキスに対するアレルギーが起こるため、
青魚を食べるとアニサキスがいなくても
蕁麻疹が出たりすることがあります。

これは生きたアニサキスによるものではなく、
調理され死んだアニサキスでもその成分で、
アレルギー反応が起こっているものと考えられます。

 

皆様もアニサキスにはご注意ください。

 

吉岡医院  吉岡幹博

関連ブログ
胃アニサキス症の痛みに対する治療(2016年10月7日)