京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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コロナ治療における内服薬の使い分けについて

2023年10月17日

急速に秋が深まってきました。
長かった夏から一転し朝晩は寒さも感じます。
皆様も風邪などにお気を付けください。

今週から本格的に
インフルエンザの予防接種が始まりました。

例年ですと流行の時期を見越し、
11月から12月に接種される方が多かったのですが、
今年はもう流行していますので早い方がいいです。

ご希望の方は電話でご予約ください。

 

 

本日はコロナに使用する抗ウイルス薬のお話です。

コロナには内服薬や注射薬など、
いくつかの種類があり、
患者様の重症度や状態により使い分けています。

私は入院で使用する薬のことはわからないのですが、
発熱外来に来られコロナ陽性になった方に、
飲み薬の抗ウイルス薬を処方することがあります。

現在外来で使用できる内服抗ウイルス薬には、
商品名で、「ラゲブリオ」「パキロビット」
「ゾコーバ」の3種類があります。

薬品名は以下の通りです。

ゾコーバ:エンシトレルビル フマル酸
ラゲブリオ:モルヌピラビル
パキロビッド:ニルマトレルビル・リトナビル

薬品名は覚えにくいので商品名でお話しします。

 

この中で一番最初に出たのはラゲブリオでした。
まだコロナの治療薬がなかったころで供給も少なく、
投与は重症化リスクのある方に限られていました。

高齢者や持病のある方など、
重症化リスクの高い人のうち、
軽症から中等症の患者さんに処方されます。

現在は、重症化リスクは高くなくても、
症状の強い患者さんに処方されることもあります。

重症化リスクがあるワクチン未接種の患者を対象にした
国際的な試験では、ラゲブリオが入院または死亡のリスクを、
有意に低減させたと報告されています。

ラゲブリオと同様に、
重症化リスクの高い人に処方される飲み薬としては
次に出てくるパキロビッドがあります。

臨床試験では、
ラゲブリオよりパキロビッドの方が、
重症化リスクを低減させるという結果が出ています。

しかしパキロビッドは、
この後に詳しく述べますように併用できない薬も多いため、
持病のある方は使えない場合があります。

ラゲブリオのいいところは、
投与禁忌や注意が少なく、
誰にでも処方がしやすいところにあります。

投与の対処は18歳以上の方で、
妊娠している女性又は妊娠している可能性のある女性は
服用できません。

 

次に出てきたのがパキロビットです。

パキロビッドは、高齢者や持病のある方など、
重症化リスクの高い人のうち、
軽症から中等症の患者さんに処方されます。

重症化予防効果が最も高い(88%減)経口内服薬で、
妊婦さんにも投与可能です。
ラゲブリオと比べると非常に高い
重症化予防効果ということになります。

しかしパキロピッドで最も慎重になるべきポイントは
他の薬との相互作用です。
投与時に中止や慎重にならなければならない薬が多数あります。

また腎臓の機能が悪い方は処方量を減らす必要があり、
取り扱いには十分注意が必要になります。

通院中の患者様で血液検査をしている方はいいのですが、
初めての患者様、血液検査の無い患者様には、
腎機能が分からないと使用は難しくなります。

このようにパキロビットは、
これら3剤の中では少し使いにくいお薬となります。
ただ最も効果が高い薬との認識です。

 

最後に最も新しく出たのがゾコーバです。

ゾコーバは日本製のコロナ内服薬で、
リスク因子を有しない軽症〜中等症Ⅰに使用可能です。

他の薬は重症化の高い方に限定して臨床試験が行われましたが、
ゾコーバでは重症化リスクの低い方も含めた臨床試験を行い、
有効性が評価されました。

発症後3日以内に服用を開始すると、
オミクロン株に特徴的な咳や喉の痛み、発熱などの5つの症状が
平均7日前後でなくなり、
プラセボとの比較で25時間短縮されました。

12歳以上なら重症化リスクに関わらず投薬可能で、
副作用もほとんどないことも特徴です。

ただゾコーバを服用する際に2点重要な注意点があります。

まずゾコーバは重症化リスクを下げる薬ではないということで、
ゾコーバを飲むと重症化しないということではありません。

次に非常に多くの薬との飲み合わせが悪い薬だということです。
パキロビットも多かったのですがゾコーバも同様です。
また妊娠している方や授乳している方は投与できません。

逆に言えばゾコーバは飲み合わせさえ注意すれば、
とても使いやすいお薬です。
重症化リスクのない多くの方に対し、
インフルエンザで使用するタミフルのようなイメージです。

 

以上3つのコロナ内服薬について
簡単に説明いたしました。

では、実際の現場では、
この3剤をどのように使い分けるのでしょうか。
適切な使用法は最も新しいガイドラインに示されています。

 

まず重症化リスクのある方は、
パキロビットを選択します。
重症化リスクのある方では有効性が最も高いからです。

しかし前述のように、
パキロビットは飲み合わせの問題や、
腎機能により投与量を変える必要性があります。

パキロビットが使用できない場合は、
ラゲブリオの出番となります。

ラゲブリオは有効性ではパキロビットに劣りますが、
妊娠していたりその可能性のある人以外は、
18歳以上なら誰でも使用することができます。

 

また重症化リスクのない方では、
ゾコーバが選択されます。
ゾコーバも副作用が少なく出しやすいお薬です。

 

これがフローチャートです。

(新型コロナウイルス感染症診療の手引き・第10.0版より)
エンシトレルビル :ゾコーバ
モルヌピラビル:ラゲブリオ
ニルマトレルビル・リトナビル:パキロビッド

 

それぞれの内服薬の特徴より、
とても分かりやすいフローチャートです。

図の中の「レムデシベル」は点滴用製剤で、
外来で必要な日数を処方することはできません。
従ってパキロビットの次は、
直接ラゲブリオになると思われます。

そして重症化リスクの低い方は、
ゾコーバとなります。

 

最後に費用についてです。
これらのお薬はこれまでは無料でしたが、
令和5年10月から窓口負担が生じるようになりました。

医療費の自己負担に応じて以下の費用となります。
3割の方:9,000円
2割の方:6,000円
1割の方:3,000円

本当は3割負担でも数万円するようなお薬で、
9000円を越える額は公費負担となっています。
(パキロビットは5日間で10万円弱の薬価収載)

いずれにしても高価なお薬ですので、
それぞれの方の症状や基礎疾患に合わせて、
投与を検討する必要がありますね。

 

以上、
コロナ治療における内服薬の使い分けについて
簡単にまとめてみました。

皆様のご参考になれば幸いです。

 

 

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