京都市の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科 吉岡医院

京都市の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科 吉岡医院
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「かかりつけ医制度」について

2025年9月17日

暑い日が続いていますね。
今年の夏は特に蒸し暑さが長引き、体調管理が難しい時期です。
夏バテの延長で食欲が落ちている方も多いのではないでしょうか。

一方で、秋の話題も聞こえてきます。
ニュースでは「今年のサンマは豊漁になるかもしれない」とありました。
久しぶりに食卓に並ぶ秋刀魚を楽しみにしたいですね。

さて今回は「かかりつけ医制度」についてのお話です。


かかりつけ医制度とは?

「かかりつけ医」とは、普段から健康や体調のことを気軽に相談できるお医者さんのことです。
風邪や生活習慣病といった身近な病気の診療はもちろん、予防接種や健診結果の相談、そして必要に応じて専門病院への紹介もします。

国がこの制度を進める背景には、超高齢社会による医療費の増大や、大病院の外来混雑といった課題があります。
「誰でも自由にどこでも受診できる」ことは日本の医療の強みですが、その結果、大病院に患者が集中して待ち時間が長くなり、本来必要な高度医療に支障をきたしているのです。

そこで国は、「まず地域のかかりつけ医に相談し、そのうえで必要なら大病院へ」という流れをつくろうとしています。


制度の歴史と今後の流れ

実はこの制度は、すでに 2015年(平成27年)ごろから診療報酬の中で少しずつ導入されていました。
その後段階的に整備が進み、2024年(令和6年)の診療報酬改定では“かかりつけ医機能”を持つ医療機関を評価する仕組みがさらに強化されました。

そして 2025年(令和7年)以降は、制度がより一層本格化する予定です。
具体的には、紹介状なしで大病院を受診すると、これまで以上に高額の「特定療養費」を自己負担する仕組みが広がっていきます。
つまり患者さんは、まず地域のかかりつけ医に相談しないと、大病院を受診する際に経済的な負担が増える方向に進んでいるのです。


厚労省がかかりつけ医に求めていること

厚労省が「かかりつけ医」に求める役割は次のように定められています。

  • 健康や病気についての相談に応じること
  • 必要に応じて専門病院や他医療機関を紹介すること
  • 健診や予防接種の結果を踏まえた健康管理を行うこと
  • 夜間や休日を含めた継続的な対応体制を持つこと
  • 在宅医療や看取りを含め、地域で総合的に患者を支えること

こうした役割を担うことで、患者さんにとっては「いつでも相談できる安心感」が得られ、
大病院は高度な治療に専念できる、というのが制度の建前です。


本音の部分

しかし現場で働く私たち医師にとっては、少し違った側面も見えてきます。

この制度の本音は、やはり「医療費を抑えること」にあります。
患者さんが直接大病院に行くと検査や治療が増え、医療費が膨らみます。
そこで、まず開業医が入口となって振り分けを担う――これが国の狙いです。

問題は、そのしわ寄せが開業医に強くのしかかっている点です。

実際には、

  • 24時間対応・緊急時の連絡体制を整えることを求められる
  • 休日や夜間を含めた継続的な対応を期待される
  • 外来診療だけでなく、在宅や看取りまで総合的に担うよう圧力がある
  • しかし、そのための十分な報酬は用意されていない

つまり「役割は増やすが、報酬は据え置き」という状況です。
現場では「医師を都合よく酷使している制度ではないか」との声も出ています。
特に中小の診療所では人手が限られているため、過労や燃え尽きのリスクが高まっています。


それでも私たちは

とはいえ、私たちがかかりつけ医として地域の皆さまの健康を守ることには大きな意味があります。
普段から顔を合わせ、体のことを理解しているからこそ、体調の変化に早く気づくことができます。
そして安心して医療や介護につながっていただけるのです。

本来「かかりつけ医」という言葉は、
自分や家族のことをよく知ってくれている、近所の親しみあるお医者さんを指していました。
しかし国はこの柔らかな言葉を制度に利用し、
いつの間にか新しいルールや義務を背負わせる“規制の言葉”に変えてしまった面もあります。

それでも私たちは、かかりつけ医の原点――
「あなたのことをよく知り、安心して相談できる存在」
としての役割を大切にしたいと思います。

どうぞこれからも安心してご相談ください。
そして一緒に、健やかな日々を積み重ねていきましょう。

吉岡医院  吉岡幹博